上高地地域では、「上高地ビジョン2014」に基づき、多様な主体による協働型管理を進めており、本業務では、2024年度のビジョン改訂に向け、中部山岳国立公園上高地連絡協議会の各種会議の開催支援を行った。すなわち、現ビジョンの行動計画進捗状況を各実施主体からヒアリングで把握したうえで、3つの評価部会(防災・生物多様性・観光)で評価を行い、協議会総会で次期ビジョンの骨子について協議した。また「上高地における河床上昇対策の基本的な考え方と実施方針」に基づくPDCAサイクルを着実に実行するための検討部会についても、併せて開催支援した。
阿蘇草原再生協議会の事務局として各種会合の開催・運営支援を行った。今年度は、協議会構成員の共通認識である「阿蘇草原再生全体構想(第3期)」を策定し、その目標実現に向けて、具体的な課題を整理・抽出した「アクションプラン」を取りまとめた。また、今後の取組の柱の1つである「公益的機能保全のために多様な主体が関わる草原管理」を推進するため、環境直接支払制度の導入や草原の水源涵養機能に着目した受益者負担の仕組みづくりの検討を行ったほか、草原の炭素固定化機能の解明のための調査やJ-credit制度導入に向けた有識者との意見交換会を実施した。普及啓発では、「草原再生レポート」や「協議会だより」の定期刊行物に加え、インタビュー記事を中心に構成したパンフレット「阿蘇と草原とわたしと」を作成。前年に引き続き、阿蘇草原に関するGISデータ情報基盤整備に取り組み、「阿蘇地域牧野位置図」の更新や情報公開のためのプラットフォーム構築の検討を進めた。 詳細情報(PDF)
令和4年4月に熊本市内で行われた「第4回アジア・太平洋水サミット」の関連イベントとして、5月21日、熊本市民会館にて「熊本の水と、阿蘇草原ってどんな関係!?」の開催・運営を行った。2名の有識者による講演(草原の水源涵養機能に関する最新研究、阿蘇草原の現状や危機)、阿蘇草原再生の活動紹介、草原再生関係者5名によるパネルディスカッションを行い、白川下流の熊本地域住民への普及啓発を図った。
全国に展開されている長距離自然歩道が、コリドーとして、国立公園などの法的保護区や重要里地里山などの非法的保護区を連結させて生態系ネットワーク形成に貢献し得るか否か、検討を行った。具体的には、①検討の基礎情報として、全国の長距離自然歩道と法的保護区・非法的保護区の重複状況についてGISを用いて都道府県別にデータ整理を行い、地方毎に分かりやすい図を作成した。②①で得られた情報から典型地域を2件抽出し、当該地域に関する既存文献資料をもとに、長距離自然歩道が生態系ネットワークの形成に資するための条件や要因、課題について整理・分析を行った。
屋久島においては観光客・入山者が増大する一方、自然観光資源の適正な利用、利用者負担制度について多くの課題を抱えていることから、前年度に引き続き、情報整理と地元自治体が主催する検討部会の開催支援を行い、エコツーリズム推進全体構想(暫定版)のとりまとめを行った。全体構想には、エコツーリズムを推進する意義や、自然観光資源の適正利用を促すための「屋久島・口永良部島ルール」などが盛り込まれた。加えて、全体構想(暫定版)を島民へ啓発する概要版チラシを作成した。さらに、特定自然観光資源指定の可能性がある永田浜のウミガメについて、適切に観察会を実施するための予約システムの構築について、検討を行った。
令和3年7月に世界自然遺産に登録された奄美大島・徳之島を含む奄美群島では、「生態系保全」型と「環境文化」型を掲げた国立公園に指定されている(平成29年3月)。本業務は奄美群島5島のうち喜界島・沖永良部島・与論島において、地域の実情に即した協働型の「国立公園管理運営計画」の策定に向けて、令和2年度から引き続き検討・取りまとめを行った(奄美大島及び徳之島については平成31年度に先行して策定済み)。計画の内容としては、①国立公園区域に限定せず島全体を対象に自然環境の保全や利用を考えること、②3島の自然の共通性と違いに応じて島ごとに異なる環境文化が成立しており、国立公園としてもそれを強調することでそれぞれの地域産業の活性化や住民の誇り・愛着につながる運営を目指すことなどを特徴としている。 詳細情報(PDF)